西村大臣のトーク心理分析 <苛立ち・頑張り・プライド>
トーク・スピーチ
■ 記者からの質問に対する3つの逆なでポイント
7月2日、西村康稔経済再生担当大臣のコロナ感染者増加に関する記者会見において、「感情的になりすぎ」「もっと冷静さが必要なのでは?」という意見が多く出ていました。
さて、西村大臣は、このときなぜこのような答弁になったのでしょうか。
トーク心理を分析してみましょう。
西村大臣の様相が変化したのは、会見が始まってから約20分が経過したとき、
ある記者がこう質問したあとでした。
「(前略)かつては40人でも驚いていた。100人でも今はぜんぜん驚かない。大丈夫だ。でも、責任を持てと言われる。感染防止に力を尽くせと言われるとですね、非常に行動がしにくいと思うんですがいかがですか」
記者がこう質問した後、西村大臣の表情がこわばり、すぐに口を開きました。
「私はひとことも100人で大丈夫だとは言っていません!
警戒をして、緊張感をもって、警戒をするべき状況だというふうに申し上げてます」
そしてそのまま約5分もの間、誰にも口を挟ませず、ひとりでしゃべりきり、会見を終えました。
この質問によって西村大臣の感情が逆なでされたポイントは3つとみられます。
〇以前は40人でも驚いていたのに、今は100人でも驚かなくなったという、矛盾を突かれた点。(実際は「100人でも大丈夫だ」とは言っていなくても)
〇「大臣として具体案を提案するべき」という自分に対する指示。
〇コロナ対策に尽力していないのではないかという不信感の察知。
これら3点が、西村大臣の感情を逆なでしたため、口調が変化したとみられます。
自分は頑張っているのに、なにもやっていない記者に簡単に発言されたくないという気持ちもあったのでしょう。
■ 「図星」で乱れる感情
ですが、人はどこかで「図星」であると感じている部分がなければ、感情が乱れないものです。
誰もが認めるイケメンは「ブサイクだね」と言われても、意に介さないでしょうし、大富豪に「生活、苦しいんでしょう」と言っても、何を言っているのだろうと首を傾げるか、面白いことを言うじゃなかと笑うでしょう。
西村大臣は、どこかで記者の質問の中にあった事実を認めていたのかもしれません。
または、少し好意的に見れば自分はもっとできる人間だという確信があるからこそ、じれんまが噴き出したのかもしれません。
西村大臣は、この質問の後、5分もの間、ひとりでしゃべり続けました。
しかもここから手振りの回数が増えていき、話している間にしだいに気分が上がっていく様子が垣間見れました。
この状態は、怒りを感じていたものの、次第に自分の弁論に酔い、それを貫くことで自分のプライドが保てると感じたとき、自分の考えが絶対的に正しいと確信し、人々を席巻できる自信に満ち溢れてきたことの表れです。
余談ですが、浮気の言い訳が天才的に上手い男性も、この手で「やっていなかったこと」にしてしまうことができます。
5つの具体的特徴は、
〇一人で長時間しゃべりまくる。
〇身振り手振りをつける。(又は、表情を動かす)
〇本筋とは全く関係ない話をもっともらしく盛り込む。
〇ところどころでパートナーを褒める。
〇ところどころでパートナーの弱点を指摘する。
です。
浮気を疑っている奥様もご用心!
■奇跡を生み出す「10秒の間」
私は、西村大臣の気持ちが分からないでもありません。
頑張っているときに、信頼関係のない相手から、ああしろこうしろと言われると、苛立ってしまうこともあるからです。
ですが、リーダーである以上は、どんな質問も包み込み、対応する力は必要です。
では、どうすればこんなとき、上手く感情をコントロールできるようになるのでしょう。
私が推奨するのは、「10秒の間」です。
苛立つ質問には即答せず、10秒待って気持ちを整理して言葉にする。
たったこれだけで、まったく違う回答ができるようになります。
自分が人前でしゃべっていると「10秒の間」は長いと感じます。
ですが、聞いている人は「10秒の間」をしゃべり手の自信や余裕と感じたり、次に話すことの期待が高まったりして、決して長くは感じないものです。
カチンと来たらぜひお試しください。
相手に勝とうとした時点で、負けてしまうから。
今後もニッシ―トークにも注目しています!